Googleの非営利向け広告(Ad Grants)で2026年に押さえる要件|入札上限2ドルが外れる条件と、コンバージョン0が先に問題になる理由
Googleの非営利向け広告(Ad Grants)で2026年に押さえる要件|入札上限2ドルが外れる条件と、コンバージョン0が先に問題になる理由
Google Ad Grants(グーグル アド グランツ)は、認定を受けた非営利団体が月最大1万ドル分の検索広告を無料で出せる制度です。以前は「1クリック2ドルまでしか入札できないので、競争の激しいキーワードには出せない」と説明されることが多くありました。
先に結論を書きます。
- 2ドルの入札上限は、コンバージョン(成果)をもとに自動で入札する方式なら外れる場合があります。 Googleの非営利団体向けヘルプでは、「コンバージョン数の最大化」「目標コンバージョン単価」「目標広告費用対効果」を使うと、アカウントの成果に応じて2ドルを超えて入札できると説明されています。
- ただし、その前提になるのがコンバージョンです。 Ad Grantsには「月1件以上のコンバージョンを記録すること」という要件があります。コンバージョンが0のままでは、上限が外れる・外れない以前に、要件を満たしていない状態です。
- 滞在時間やトップページの訪問は、コンバージョンに数えられません。 対象になるのは、フォーム送信、資料請求、会員やメールの登録、電話など、行動を伴うものです。ページの表示を成果にする場合も、フォーム送信後の完了ページのように、行動を終えた人しか開かないページに限ります。
つまり2026年のAd Grants運用で最初に見るべきは、入札単価ではなく「意味のあるコンバージョンが毎月1件以上、正しく記録されているか」です。この記事では、要件の全体像と確認の手順を、実際のアカウントで測った数字とあわせて整理します。
制度そのものの概要は、Google Ad Grants運用の実態とGoogleに広告費を払わず上位表示できる枠があると知っていますか?で紹介しています。本記事はその続きとして、運用の要件に絞った実務版です。
2026年時点で押さえるAd Grantsの主な要件
Googleの非営利団体向けヘルプ(アカウント管理ポリシー、ポリシー遵守ガイド)に書かれている主な要件を、運用で確認する順に並べます。2026年9月時点で公式ページを確認した内容です。
| 項目 | 要件 | 満たせないとどうなるか |
|---|---|---|
| 入札方式 | 2019年4月22日以降に作成したアカウントは、コンバージョンをもとにした自動入札(スマート入札)を使う | 要件違反 |
| コンバージョン計測 | 正しく計測を設定し、月1件以上のコンバージョンを記録する | 要件違反 |
| コンバージョンの中身 | 寄付・申込・登録・資料請求・フォーム送信・電話など。滞在時間やトップページ訪問は「その他」のカテゴリにし、コンバージョンから外す | 要件違反 |
| クリック率(CTR) | アカウント全体で毎月5%以上 | 2か月連続で下回ると一時停止 |
| キーワード | 品質スコア1〜2のキーワードは停止か削除。1語だけのキーワードは原則不可(自団体名など一部例外) | 要件違反 |
| 構成 | 1キャンペーンに広告グループ2つ以上。サイトリンク(広告の下に出る追加リンク)2本以上。地域設定を適切に | 要件違反 |
| プログラムアンケート | Googleから定期的に届くアンケートに回答する | 回答しないとアカウントが無効化される |
2ドルの上限について大事なのは、「成果に応じて」という条件です。コンバージョンの実績が無いアカウントでは、自動入札は判断材料を持てません。制度上は上限が外れていても、実際には強く入札されにくいと考えるのが安全です。
要件を満たすための確認手順
ここからは、運用を始めるとき・立て直すときに確認する順番です。各手順の末尾に、ある非営利団体のアカウントで実際に測った数字を「確認を省くと起きること」として添えます(団体名は伏せます)。
1. コンバージョンの棚卸しをする
管理画面の「目標」から、入札に使う「メイン」と、観測だけの「サブ」を一覧にします。滞在時間・トップページ訪問・誰でも開けるページの閲覧がメインに入っていたら、サブへ移し、カテゴリも「その他」にします。メインに残すのは、フォーム送信完了、資料ダウンロード完了、会員やメールの登録、電話、講座やセミナーへの申込など、行動が伴うものです。LINEの友だち追加ボタンのクリックを成果にする場合は、同じ人の連打で水増しされないよう、カウント方法を「1回」にしておきます。
ページ閲覧をメインに残したままだと、数字が付いても要件を満たしたことにならず、自動入札も「ページを見られること」を目標に学習してしまいます。
確認を省くと起きること(実測例): あるアカウントでは、メインのコンバージョンに店舗ページの閲覧が3つ入っていました。これをサブに移し、メインを電話・LINEボタンのクリック・資料ダウンロード完了・相談フォームの送信完了の4つに絞りました。
2. 実際に押して、記録されるか確かめる
フォームならテスト送信、ボタンならブラウザで実際にクリックして、コンバージョンのタグが送信されるかを確認します。コンバージョン0には「計測が動いていない」と「成果が出るページに人が来ていない」の2通りがあり、ここで切り分けられます。記録されなければ計測の問題、記録されるなら流入の問題で、打ち手がまったく変わります。
確認を省くと起きること(実測例): コンバージョン0の月が続いていたアカウントで、LINEボタンを押してタグの送信を確認したところ、計測は正常でした。原因は、ボタンのあるページに広告からの流入がほとんど無かったことでした。計測を疑って設定をいじり回す前に、この切り分けをしておくと遠回りを防げます。
計測の確かめ方は、広告の購入計測が取れているか確かめる手順も参考になります。
3. 入札は「コンバージョン数の最大化」から始める
寄付や会費のように金額が付く成果を計測していない段階では、まず件数を取りにいく「コンバージョン数の最大化」で始め、目標単価は設定しません。件数の実績が安定して溜まってから、金額を重視する「コンバージョン値の最大化」などへの切り替えを検討します。
4. キーワードは検索数の実測から作る
Googleの検索候補(検索窓に出る候補)で困りごとの言い回しを集め、キーワードプランナーで月間検索数を確認し、数字がある語だけを採用します。1語だけのキーワードは原則使えないので、2語以上の組み合わせで設計します。
確認を省くと起きること(実測例): 伝えたい言葉を組み合わせて作ったキーワードは、あるアカウントで111語中67語が「検索ボリュームが少ないため表示されにくい」状態になりました。別の構成でも139語中114語(約8割)がキーワードプランナー上でほぼ検索されていない語で、広告がすべて承認済みでも表示0の日が続きました。一方、検索数を確認すると、次のような「困りごとの言い方」には検索がありました(全国・月間の目安)。
| キーワード | 月間検索数の目安 |
|---|---|
| 美容室 開業 | 720 |
| 美容室 集客 | 480 |
| 口コミ 返信 | 480 |
| 口コミ 返信 例文 | 390 |
| 美容室 経営 | 390 |
1日の予算を大きく上げても、検索されない語には表示の機会がありません。予算を増やす前に、検索の量と、成果が記録されているかを確認します。成果の記録が無いと、自動入札は強く入札しにくいためです。
なお、Google広告のAPIでキーワードプランナーの検索数を取るには、開発者トークンに一定以上のアクセス権限が必要です。本番アカウントで使える最初の段階の「Explorer(探索)」権限では、キーワードプランナーの機能が使えずエラーになるため、当面は管理画面から調べるのが確実です。
消費者側の検索(「美容室 近く」など)が混ざると、目的と違う人にクリックされクリック率も下がるため、除外キーワードで外します。部分一致の広がり方については、リスティング広告の部分一致で予算が溶ける仕組みで詳しく書いています。
5. クリック率は月次・アカウント全体で見る
停止の判定は、アカウント全体の月次クリック率です。月の途中で5%を割りそうなら、キャンペーン別に分けて、全体を下げている1本を特定します。品質スコア1〜2のキーワードは要件どおり停止し、定期的に確認します。
確認を省くと起きること(実測例): あるアカウントの月次クリック率は、7月4.47%、8月5.75%、9月(1〜19日)4.42%と、5%の線を行き来していました。8月が5%を超えていたので「2か月連続」にはなっていませんでしたが、全体の数字だけでは原因が見えません。キャンペーン別に直近30日の数字で割ると、4.6〜4.9%の1本と、6.2〜8.3%の情報提供ページ向けの1本に分かれ、全体を下げているキャンペーンがはっきりしました。
6. 非営利の広告として見える状態に整える
アカウント単位で設定したサイトリンクや補足テキスト(コールアウト)に、料金プランや加盟募集など商用の文言が残っていないかを確認します。キャンペーン側に同じ種類の設定が無いと、アカウント単位の設定がそのまま表示されるためです。着地ページ側も、団体の概要やミッションが確認できる状態にしておきます。
想定しておきたいリスク
要件を満たす設計にしても、運用の途中で次のようなことが起こりえます。事前に対策しておくと安心です。
- 日次の実績チェックが止まる。 外部のスクリプトでAPIから実績を取っている場合、Google Cloudの認証アプリが「テスト」状態のままだと、認証が約7日で切れることがあります。チェックが止まっている間も広告は配信され続けるため、クリック率の悪化に気づくのが遅れます。認証アプリを本番公開にしておくのが恒久的な対策です。
- 広告文が自動で書き換わる。 「最適化案の自動適用」で広告に関する項目がオンになっていると、Googleが広告文を変更することがあります。非営利の広告として表現に気を配る場合は、オフにしておくのが無難です。
- 消費者向けの検索が混ざる。 業界向けの団体でも、一般の人が検索する語(髪型、画像、近くの店など)に広告が出ると、クリック率とコンバージョン率の両方が下がりやすくなります。
費用が発生する通常のGoogle広告の見直し手順は、Google広告の費用がいつの間にか増えていたときの棚卸しにまとめています。
まとめ
- Ad Grantsの2ドル上限は、コンバージョン数の最大化などCVベースの自動入札を使えば、成果に応じて外れる場合がある
- ただし月1件以上のコンバージョンが要件。滞在時間やトップページ訪問は数えない
- コンバージョン0は、上限が外れるかどうか以前に要件未達。クリック率より先に確認する
- 0の原因は「計測が壊れている」か「ボタンのあるページに人が来ていない」かを、実際に押して切り分ける
- 人が来ない原因になりやすいのが、検索されていないキーワード。検索数を実測してから作る
- クリック率は月次・アカウント全体で判定される。線上にあるときはキャンペーン別に割って原因を探す
無料の広告枠であっても、Googleが求めているのは「広告を見た人が、団体のページで目的を果たせているか」です。入札単価の上限より先に、成果が正しく記録される状態をつくることが、2026年の運用の出発点になります。